質問

妻A、夫B、夫のもと愛人Cがいます。
BとCは財政的に行き詰まって破産手続を裁判所に求め、最後に免責決定を得ました。※ここでは、破産債権者表は作られていない同時廃止の場合を想定します。
BとCは借金がなくなり、それぞれ勤め先からそこそこの給与を得ています。
Aは、二人を相手に慰謝料500万円を支払えという裁判を起こしました。裁判では、B・Cは関係があったことを認めながら、破産手続で免責を得たから払う必要がない、と主張をしました。Aは、B・Cは借金の支払義務はなくなったのはわかるが、借金ではない慰謝料は請求出来るはずと主張しました。
裁判所は①被告BCは○○円を支払えという原告勝訴の判決②原告の請求を棄却するという原告敗訴の判決のどちらを言い渡すでしょうか。

答え

基本的には②の判決を言い渡す。

その理由の結論
裁判所がした免責決定は、借金だけに限られず、不倫慰謝料請求権も免責させる。不倫行為は、破産法253条にいう、「破産者が悪意で加えた不法行為」ではないのだから。

 

理由の詳細
破産申し立てをした個人(生きた人間)の大部分は、破産手続の最後に「免責決定」がもらえます。免責は個別の債務ごとに免責されるのではなくて、その人の債務全部について与えられる。俗にいう借金がチャラになる。次にのべる例外となる債務の義務者であっても、例えば、税金を払っていない人、故意に人の生命・身体・名誉などを傷つけた人、養育費を払わないでその義務を果たしていない人であっても、免責が受けられる。免責を許さない要件(財産隠し、特定の人だけ弁済、裁判所に提出すべき帳簿の隠匿や偽造、虚偽の債権者名簿の提出など)に該当しない限り、裁判所は免責決定する。

この免責決定の効力(チャラにする効力)は、次の債務グループには及ばない。
①税金②悪意で人の権利を侵害③故意と重過失による人の生命・身体侵害④夫婦や親子の扶養関係義務など。

こうして、免責決定は、誠実に破産手続に協力すれば得られる。悪いやつでも。
そうすると、税金を踏み倒された国や市町村人、故意に傷つけられた被害者、見捨てられた妻子はどうなるのか。

税務署は、免責の効力が及ばないのだからとして、債務者の財産を差押が出来る。税務署は、自助的に差押が出来る。
故意に傷つけられた被害者はどうか。
この被害者は、免責されない債権者として請求出来る。この場合、請求出来るというのは、免責を得た債務者を相手に賠償金を払えと要求しても、相手が自分は「免責された」と言い張ると、訴訟を起こして判決を得て、資産を差押をするしかない。

破産までした人は、手続にまじめに協力して破産宣告を得ているので、資産はない。破産宣告後に、まじめに働いて高い給与をもらっているか、相続とか贈与を得たなら財産を得ている。これを狙うしかない。

質問のAの立場はどうなるか。
裁判所が判断のよりどころとするのは、破産法253条。
「免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一   租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二   破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三   (以下は略)」
裁判官は、BとCがAに対して「悪意で加えた不法行為者」かという判断をすることになる。
裁判の実務では、この規定の「悪意」とは、不正に他人を害する意思ないし積極的な害意を指す(通説。これを害意説という)。
これを適用される限り、裁判官は②の請求棄却の判決をすることになる。