Q:当社は家賃の1年分に当たる敷金を入れて、建物を借りて営業しています。ところが、このたび建物の所有者(貸主)が民事再生手続に入ったと連絡がありました。建物には入居前から貸主の債務のため抵当権が設定されており、競売で落とした者(競落人)から退去を求められることが大とのことです。そのときは退去は仕方がないのでしょうか、又、当社の敷金は全額返ってくるのでしょうか。

A:上記のような場合、競売人から退去を求められた場合、退去しなければなりませんが、最長6ヶ月間は猶予を求めることができます(民法395条)。その間は使用料(賃料額とは限りません)を払わなければなりませんし、競落人に対しては敷金を返してくれとは言えません。

敷金は、民事再生手続の中で、6か月分は他の一般債権より優先します(民事再生法93条3項)。民事再生では退去したときに優先債権とみなされます。支払受けるのは退去または誰かの競落で賃貸借契約が終了した時点以後です。残りの6か月分は他の再生債権者と同じに扱われ再生計画に従って相当部分のカットされ、カットされない部分の延べ払いとされる可能性が大です。

尚、貸主が会社更生手続に入った場合でも民事再生の場合と同様です。

ところが、貸主が破産手続に入った場合は異なります。競落人には6ヶ月の猶予期間を求めることが出来ることと、敷金を返してくれとは言えないことは民事再生の場合と同様ですが、破産手続では敷金返還請求権は全部優先債権ではなく一般債権です。民事再生や会社更生とは異なって優先債権になることはありません。

ちなみに、借主は、退去時点までに賃料を払っていない場合には、退去してからは相殺が出来ますが、退去前には賃料支払義務と敷金返還債務を相殺することは出来ないのです。

「敷金の保全」

最近は不動産の貸主側の倒産が増えています。借主が入れた敷金は、貸主の民事再生、会社更生の場合は賃料の6ヶ月分は保全されますが、破産手続では保全されません。契約に際しては出来ることなら賃料の6か月分以内にするのが望ましいでしょう。賃貸借契約交渉で借主側が強い力関係にあるときは、敷金を低額にしたり、保証人をとったり、抵当権を設定してもらうなら一層望ましいところです。

熊本経済 平成20年11月号掲載