Q:私は友人から絶対に迷惑をかけない、名前だけだといわれて友人が経営する会社の取締役となりましたが、最近は放漫経営で会社はうまくいっていない様子です。後日、何らかの責任を取らされる心配はないでしょうか。

A:形ばかりの取締役の責任(名目的取締役)については、裁判所は相当厳しい態度を取っています。
あなたから見れば、自分は頼まれて取締役になっただけだ、社長からは役員としての仕事はしなくていいし、迷惑は一切かけない等と言われて、その通りにした、役員報酬も一切もらっていない、何も悪いことはしていない、と思われるかも知れません。
しかし、会社と取引した債権者にして見ると、役員による法令順守(コンプライアンス)機能が果たされていると期待してよいのではないでしょうか。

ゴルフ会員権の大量募集をした後、倒産した茨城カントリークラブ事件について、東京地裁は次の通り判決しています。

「株式会社の取締役は、代表取締役の業務執行全般を監視し、必要があれば、取締役会を自ら召集するなどして、業務執行が適正になされるようにすべき職責を負うところ、会社経営者との間で、就任に当たって名目上の取締役となる旨の合意がされ、実際にも会社の経営に全く関与せず、また、株主総会や取締役会等の法定機関が全く機能していなかったことは、右職責を免れる理由となるものではなく、むしろその任務懈怠(けたい)を最も明確に示す事情といい得るのであって、この理由は、現実の違法行為に関与した代表取締役等が会社の経営を独断専行していた、いわゆるワンマン会社の場合でも異なるものではない」

会社と取引などがあった者に対する取締役の責任について、商法第266条の3で次のように定められています。

「取締役がその職務を行うにつき悪意又は重大なる過失ありたるときはその取締役は第三者に対してもまた連帯して損害賠償の責に任ず」

名目的取締役の第三者に対する責任については、これを認めない裁判例もありますが、最近は重過失を認定してこれを認める傾向が強くなっています。企業のコンプライアンスがやかましくなっていることと無縁ではありません。

「名目的取締役の責任」

会社の経営が行き詰まって、もはや早晩倒産が必至となってから、単に延命のために融通手形を連発したり、自転車操業を繰り返したりしたのち、倒産したような場合、行き詰まった後に焦げ付いた債権者から、損害賠償を請求されるおそれがあります。

熊本経済 平成17年12月号掲載